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【早稲田松竹】5/14(土)〜5/20(金)「ひつじ村の兄弟」「独裁者と小さな孫」

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今週の二本立て『ひつじ村の兄弟』『独裁者と小さな孫』は、国も違えば、テーマも、作品のジャンルも異なります。それでも、なぜだかこの2本の映画には似たような雰囲気を感じてしまいます。荒涼とした大地で、渋い顔をした髭面の老人の姿が重なるからだけでしょうか。

『ひつじ村の兄弟』は北欧・アイスランドの田舎で、牧羊で生計をたてている老兄弟のお話。と聞けば、牧歌的でほのぼのとしたイメージを想像するかもしれません。けれど映画が始まると、その予想はすぐに裏切られます。ふたりの兄弟は、隣同士に住みながら40年間口をきかないほど不仲なのです。彼らの関心は自分が飼っている羊だけ。羊の品評会で弟の羊が優勝すると、兄は弟の家にライフル銃を撃ち込む始末です。さらには、その羊が疫病に犯され村全体で殺処分を命じられてしまうという、なかなか容赦のない展開が続きます。

ですが、この映画は全篇を通して乾いたおかしみに包まれています。なんといってもスクリーンを占領する羊たちがチャーミング。兄弟が命より大切にしているこの羊こそ、ある意味映画の主役でしょう(原題はその名も「Hrutar=ひつじ」)。兄弟のみならず村の人々は、羊に笑い、泣き、喜び、翻弄されます。人間と生きものとのシンプルな営みが淡々と描かれる様は、悲惨な状況だからこそ滑稽に映るのです。

いっぽう『独裁者と小さな孫』は、ある国の独裁者が、突然起こったクーデターによって追われる身となり、残された孫とともに逃亡するというストーリー。素性を隠しながらの道中で、彼らが出会う人々はみな苦しみを抱えています。貧困、暴力、裏切り…国中、目を背けたくなるような憎しみや悲しみが蔓延していたのです。それはつまり、独裁者がこれまで行ってきた非道な仕打ちの結果でした。そして今度は、すべての憎悪が独裁者へと向かう時が来たのでした。

この悲痛に満ちた作品が、それでもどこか軽やかさを感じさせるのは、幼い孫の存在があるからでしょう。孫にとっては、おじいちゃんとの旅路は辛いというよりは新鮮なもの。干し草の布団も、段ボールを被って踊るダンスも、孫にとっては“初めての体験”なのです。そして独裁者自身、これまで高い城から指図するだけで見向きもしなかった国民の生活を痛いほど感じ、人間的な感覚を取り戻していきます。

悲劇と喜劇は表裏のようなもの。どうしようもなく不幸なことは、時としてユーモアを伴い、笑いに変わることがあります。今週の2本の映画に通じているのは、その語り口のバランスです。軽さと重さが絶妙で、ひとくちに悲劇・喜劇とは言い得ないおもしろさがあります。

憎しみ合う人間でも、手を繋ぐことはあるのか? 暴力の連鎖からも、人の思いやりは生れるのか? 絶望と希望――観客に委ねられるラストが余韻を与えてくれます。どこか寓話のような、独特な味わいのある人間ドラマをご覧ください。(パズー)

ひつじ村の兄弟 (Hrutar)
(2015年アイスランド/デンマーク 93分 DCP R15+ シネスコ)
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■監督・脚本 グリームル・ハゥコーナルソン
■編集 グリーマル・ヨンソン
■撮影 ストゥルラ・ブラント・グロヴレン
■音楽 アトリ・オーヴァーソン
■出演 シグルヅル・シグルヨンソン/ テオドール・ユーリウソン/シャーロッテ・ボーヴィング

■第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ

■オフィシャルサイト
http://ramram.espace-sarou.com/
■パンフレット販売あり(600円)※数量限定

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hitsuji2アイスランドの人里離れた村で、隣同士に住む老兄弟グミーとキディーは、先祖代々から受け継がれてきた優良種の羊の世話に生活のすべてを費やして生きてきた。その一方で彼らは、この40年もの間全く口をきかないほどに不仲だった。ある日、キディーの羊が疫病に侵され、村全体が恐怖にさらされる。保健所からは殺処分を命じられるものの、絶滅の危機に瀕している先祖代々の優良な羊を守るため、兄弟は40年ぶりに力を合わせることになるのだが…。

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力強く雄大な自然を舞台に、40年間不仲の老兄弟と羊の絆と愛を独特の切り口で描いた本作。生きものたちの日常的な風景が、とある事件で一変。一気に窮地に追い込まれてしまった人間の意地と覚悟が可笑しみたっぷりに映し出される。ヒューマニズムとユーモアを見事に同居させ、そこに垣間見える皮肉な顛末が人間の深淵をなでるように刺激する、まったく新しいタイプの人間ドラマである。

監督はアイスランドの若き俊英グリームル・ハゥコーナルソン。長編わずか二作目にして、2015年のカンヌ国際映画祭ある視点部門において、黒沢清監督『岸辺の旅』や河瀬直美監督『あん』等の強豪を抑え見事グランプリに輝いた。ひつじ大国ならではのリアリティが紡ぎ出す、寓話のような独特の世界観。忙しなく日々を送る私たちの心に穏やかな時間を注入してくれる珠玉作が誕生した。

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独裁者と小さな孫(THE PRESIDENT)
(2014年 ジョージア/フランス/イギリス/ドイツ 119分 DCP PG12 ビスタ)

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■監督・脚本 モフセン・マフマルバフ
■製作 メイサム・マフマルバフ/マイク・ダウニー/サム・テイラー/ウラジミール・カチャラワ
■脚本・編集 マルズィエ・メシュキニ
■撮影 コンスタンチン・ミンディア・エサゼ
■編集 ハナ・マフマルバフ
■美術 マムカ・エサゼ
■音楽 グジャ・ブルドゥリ/タジダール・ジュネイド
■出演 ミシャ・ゴミアシュウィリ/ダチ・オルウェラシュウィリ/ラ・スキタシュヴィリ/グジャ・ブルデュリ/ズラ・ベガリシュヴィリ/ラシャ・ラミシュヴィリ/ソソ・クヴェデリゼ/ダト・ベシタイシュウィリ

■2014年ヴェネツィア国際映画祭オープニング作品(オリゾンティ部門)/シカゴ国際映画祭最優秀作品賞受賞/東京フィルメックス観客賞受賞

■オフィシャルサイト http://dokusaisha.jp/
■パンフレット販売あり(700円)

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dokusaisha2独裁政権が支配する国。ある晩、クーデターが勃発し、老いた大統領は幼い孫とと共に逃亡を余儀なくされる。彼は多くの罪なき国民を政権維持のために処刑してきた冷酷で無慈悲な男だった。街では民衆が暴徒化し、大統領への報復を呼び掛ける怒声と銃声が至るところで轟くなか、二人は変装で素性を隠しながら、安全な地へ逃れるべく船の待つ海を目指す――。

 

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dokusaisha3祖国を離れヨーロッパで亡命生活を続けているイランの巨匠モフセン・マフマルバフ。『カンダハール』、『パンと植木鉢』、『ギャベ』など数々の傑作を生み出してきた監督の最新作『独裁者と小さな孫』には、平和への想いが込められている。

 

dokusaisha4無慈悲な独裁者ではあるが人並みに孫を愛するお祖父ちゃんと、苦労知らずで純粋な孫の殿下。彼らは変装し民衆に混ざりながら、自らが犯した罪の重さを、目の当たりにすることになる。その光景は、イラクのフセイン政権崩壊、アラブの春など、近年の終わることの無い争いを彷彿とさせる。観る者の魂に突き刺ささるほどの衝撃的な内容ながらも、人間愛とユーモアに溢れ、スリルと冒険と希望が詰まった本作は、ヴェネツィア国際映画祭オープニング作品(オリゾンティ部門)に選出されたほか、シカゴ国際映画祭で最優秀作品賞に輝くなど、世界中の映画祭でセンセーションを巻き起こした。

DATA
早稲田松竹映画劇場
TEL
03-3200-8968
住所
東京都新宿区高田馬場1-5-16 
営業時間

上映作品によりタイムテーブルが異なりますので、週により開館・閉館時間は異なります。

<入場料> 1,300円(大人)/1,100円(学生)/800円(ラスト1本)など

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