ババくる!? 第五十七場 ゲスト:佐伯ポインティ
ババくる!? ゲスト:佐伯ポインティさん
今回のババくる!?は、早稲田大学OBでメディアを横断して、マルチタレントとして活躍する佐伯ポインティさん。YouTubeチャンネル登録者数88万人、現在はポッドキャストや書籍の出版、さらには俳優として活躍の場を広げています。学生時代のゼミやサークルの思い出から、メディアを横断して発信するタレントとしての想いについて伺いました。
高田馬場駅前の芳林堂書店にて。サイン会を開催したこともある
思い出の地で、7月に出版した『毎日ポインティ』を手にポーズ!
━ どんな学生時代を過ごしていましたか?
ポインティ:サークル活動にハマっていましたね。広告研究会、映画研究会、人物研究会など、いろいろなサークルに所属しました。「○○研究会」という名が付くサークルに入っておけば将来、就活に有利なんじゃないかという甘すぎる見積もりがありました(笑)。高校生の時に、大学生活を予習するつもりでアニメ『四畳半神話大系』を観ていました。 パラレルワールドもので、主人公が1話ごとに別のサークルに入る選択をすることで、異なる可能性の人生が描かれてとても面白くて。それで、自分もいろんな経験がしたいと思ったんです。
━ かなり忙しそうですね。特に印象に残っているサークルはありますか?
ポインティ:どこも全部面白かったですよ。複数を同時進行ではなくて、辞めることになったら、次、といった感じでした。途中から入った映画研究会では新入生が映画を撮ることになり、企画を出して裏方として撮り始めたんですが、撮影中って空調も切って、一言も喋っちゃいけないんですよね。撮り出したら、現場で喋ってる役者が羨ましくて。向いてなさすぎてすぐ辞めました。
広告研究会では、企業に学生向けの広告アイデアをプレゼンする活動をしていました。企業に提案した広告や企画が早稲田祭で実現することもあって楽しかったです。中心的に活動していたのですが、その後いろいろあって結果的に辞めることになりました。結構濃密な人生経験だったのですが、この辺のお話は12月に出る書籍に書いています。ぜひ読んでみてください。
思ったら、まず行動! 憧れのゼミで得られたこと
━ 数ある大学の中から、どうして早稲田大学を選んだのですか?
ポインティ:高校生の頃から三木聡監督の『時効警察』や宮藤官九郎さんのドラマや映画が大好きで、新作の予告ないかな~とネットで調べていたら、早稲田大学文化構想学部の「表象・メディア論系」の「幻影論ゼミ」で映像作品などを研究していることを知り、「ここで学びたい!」と強く惹かれて早稲田を目指しました。
ゼミへの思いが強すぎて、入試当日に教授の研究室前まで行ったんですが「まだ合格してないのに挨拶するのは変かも」と思い直して、その日は帰りました(笑)。入学後、教授のSNSに「ゼミを見学していいですか?」とリプライしたら、すごく喜んでくれてゼミ見学の許可をもらえたんです。毎週3年生に混じって参加していたので、ゼミの先輩たちから「1年」とあだ名をつけられて呼ばれてました。後に見学希望者からゼミ内定を狙う人が増えたっぽくて、1~2年生のゼミ見学は禁止になってて…セーフでした(笑)。
━ ゼミではどんなことをやっていたのですか。
ポインティ:課題となる作品をもとに、論じるテーマを見つけていき、仮説を立て、それに対する根拠を作品の中から探し出すという、「作品研究」というジャンルの研究活動です。映画やドラマを何度も観てレポートを書くのですが、同じ作品を5回も観ることもあって、正直飽きてうんざりすることもあります。でも、繰り返し観ることで、「ん?今のは何だ?」というような新たな発見があるんです。1回目では気づけなかったことが、何度も観ることで見えてくる。
新鮮な感動が薄れていくからこそ、冷静に作品を分析できるようになるんです。何度も観る研究の仕方は当時は苦痛でしたが今振り返ると作品研究によって、粘り強さや、すぐに答えが出ないことへの耐性が身に付いたのかもなと思います。大学は社会に出る前のモラトリアムであり、自分の学び方の型が仕上がる場所でもあるんだなと感じています。授業やゼミでレポートを書いたり、調べ物をしたり、発表をしたり、質疑応答したり…といったことが、なぜかYouTubeやPodcastでの仕事に繋がったりしているので、人生何が起きるか分かりません。
━ 就職活動も早めに行動するタイプだったのですか?
ポインティ:在学中にインターンをしていた出版エージェントのコルクに、就活はせずにそのまま入社しました。4年生の時は、インターンが忙しくて、学生と社会人を両方やっている状態でした。卒論を書く時期に担当している漫画家さんの単行本出版のタイミングと被ってしまい、会社に寝泊まりして夜に卒論を書き、昼に仕事をするような生活をしていました。
一時、出版の仕事が楽しすぎて大学を中退しようとしたんです。でも祖母、母親、叔母に「せっかく入学したのに退学するなんてありえない」と永遠に言われ続けて。これは一生言われ続けそうだったので、卒業する方が楽だと思い、頑張って卒論を書きました。結果、卒業してよかったと今では思っています。独立してから猥談バーのような変なことをしてるので、人と違うことをしたい人ほど、後々学歴が活きることもあるから、きちんと卒業しておくのがおすすめと学生の方にお伝えしたいです。
━ 独立後に「猥談」というテーマに行き着いたきっかけは?
ポインティ:ある先輩がワンナイトの話を女友達にしたら、性的なアピールと誤解されて気まずい空気になったそうなんです。それを聞いて、逆に変な空気を感じさせずカジュアルに猥談をすることはできるんじゃないかと思ったんです。猥談バーは、知人からバーの1日店長を頼まれたことがきっかけでした。「何か企画を打ってもいいですか?」と聞いたところ、OKをもらえたので、猥談だけをするイベントとして「猥談バー」を始めました。
その後、バーを譲ってもらえることになったのですが、貯金が全くなかったのでクラウドファンディングをしたところ、700万円以上集まり開業することができました。
猥談バーやYouTubeが話題に! 猥談は奥深い!?
━ 猥談バーにはどんなお客さんが来ていたのですか?
ポインティ:猥談をしても変な目で見られないという、空間ルールを設計しました。最初はちょっと変わった人も多くて、場がカオスになることもありました。でも、それも含めて全部面白かったです。最初は男女比が半々でしたが、「触らない」「連絡先を聞かない」「否定しない」などのバーのルールが定着してくると、女性客が7~8割に増えました。女性にとって“いやらしい目で見られずに気軽に猥談ができる”空間がなかったので、猥談バーは色々なメディアに取り上げていただきました。面白い猥談が、面白い猥談を呼び、会員制なのにも関わらずかなり多くの方が来店して猥談を楽しんでくれました。一時、数店舗まで拡大展開していた猥談バーですが、コロナの影響と自分がお店にいないと盛り上がらないという属人的な運営だったこともあり、2 0 2 2 年に閉店しました。そのコンセプトは、YouTubeやPodcastに引き継いで発信してきました。
今は、クイックジャパンWebで「ご長寿猥談」という企画をやっています。65歳以上の方々に猥談や恋愛の話を伺うもので、昭和や平成の時代背景が垣間見えるのが面白いです。舞台背景もバブル期のディスコ遊びから、東日本大震災での除染作業、7000万円の借金を背負った話など幅広く、シニア層の猥談は、若い読者には波乱万丈な人生経験が印象深いようで、「読んでいて元気が出る」といった声も多く届いています。この連載は来年の夏頃には書籍化予定です。
YouTube「佐伯ポインティのwaidanTV」は、視聴者から集めた猥談をカジュアルに紹介するチャンネルだったのですが、今年になってYouTubeのレギュレーションに一部抵触して、収益化が一時停止されたんです。猥談系の約3000本の動画を削除することになりました。規定に沿った動画だけを残して、チャンネルも継続しています。他にも、別の形で猥談にまつわるコンテンツができないか、模索している最中です!
今度は俳優? 好奇心の赴くままに、新たな挑戦へ!
━ 7月に発売された『毎日ポインティ』は、どうして日めくりカレンダーという企画に
なったのですか。
ポインティ:実は最初にオファーをもらった時は、YouTubeで怖い系の猥談「怖猥談」というのをやっていたこともあって、ホラーネタで何かできませんかという話だったのですが、形状が変化しまくって日めくりになりました。編集者の方の興味関心に合わせて、こういう企画はどうだろうと考えるの結構好きなんですよね~。お悩み相談の本も、連載はできなそうだったので「Podcastで話して、それを本にしませんか?」と提案したんです。そうして始まった『生き放題ラジオ』は多くの方に聴いていただけて、当初4回で終わる予定が、今では100回を超えて続いています。本当にありがたいです。
━ 最近新しく始めたことや今後やっていきたいことはありますか。
ポインティ:学生時代から演劇が好きで、よく学生演劇を観に行っていました。最近は演じる側に興味が湧いて、ちょうど好きな映画監督のワークショップが開催されると知り、プロアマ問わず歓迎とあったので思い切って参加してみました。参加してみて思ったのが、役者には表現力だけでなく、台本や役を読み取る読解力も大事なのではないか?ということです。ここでも、ゼミで学んだ作品分析が活きそうで、もしかしたら自分も表現力を磨いていけば役者ができるんじゃないか、と思ってチャレンジしてみました。
9月には、大好きな劇団・南極の舞台「ゆうがい地球ワンダーツアー」に出演しました。南極の俳優さんは細身の方が多いので、100キロぐらいある太っている人が加わったら面白いんじゃないかと思って提案したんです。南極は今、勢いがすごくあるクリエイティブ演劇集団で、作・演出を手がけるこんにち博士さんの描く、スペクタクルかつワンダフル!な世界観がとても好きで、俳優としてその一部になってみてとても幸せでした。南極、ぜひウォッチして体験してみてください。
━ 行動力や企画力に感心しました。最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
ポインティ:学生の時に思い描いていたのとは違う形で、理想が達成されることは大人になってみると多々あります。その時の自分が決めたことに囚われすぎずに、人生がもたらす意外性を恐れずに一緒に楽しみましょ~!とお伝えしたいですね。結論を出すにはまだ早いですし、完成するのはもちろん幸せですが、完成しないまま探し続けるのも幸せです。ずっと何かを探している時間って、犬がしっぽを追いかけてクルクル回っているような、そんな楽しさがあると思います。
笑顔がキュートで、瞬時に場を明るくする佐伯ポインティさん。お話を伺う中で、持ち前の行動力と企画力で、やりたいことに次々と飛び込んでいく姿に、何度も驚かされました。つらい場面でも「いい経験」「面白い」とポジティブに捉える思考に、こちらまで元気をもらいました。これからも次々と新しい「佐伯ポインティ」を見せてくれることでしょう。
Text: 櫻井 実由莉
Photo: 石森 亨
ロケ地:芳林堂書店 高田馬場店
日めくりカレンダー『毎日ポインティ』(マガジンハウス)発売中!
ポジティブすぎる、見るだけで元気をもらえると超話題!佐伯ポインティが贈るポジティブな31のフレーズと思わず笑顔になる写真を組み合わせた日めくりカレンダー。
ポインティが動画やポッドキャストで言ったフレーズが入っているよ!!
「体重3桁になったことないでしょ?まだ2桁でしょ?」
「老後は思い出し笑いしかしたくない」
「地球は友達の星だから」 「オタクくんじゃ~ん!!!」
ポッドキャスト番組「生き放題ラジオ」配信中!
ゲストプロフィール

マルチタレント。1993年生まれ、東京都出身。早稲田大学文化構想学部卒業後、漫画編集者を経て2017年に独立し、猥談系YouTuberとして活動をスタート。18年には日本初の完全会員制「猥談バー」をオープンした(現在は閉店)。24年7月からは「佐伯ポインティの生き放題ラジオ!」をポッドキャストで配信中。2025年より俳優活動を開始。チャームポイントは大笑顔!
主な書籍
『おいでよポインティの相談天国』祥伝社
『毎日ポインティ』マガジンハウス
ポッドキャスト番組 「生き放題ラジオ」
Apple Podcast / Spotify / YouTube
YouTube「佐伯ポインティのポインティTV」
@saekipointytv
SNS
X @saekipointy
Instagram @waidantv
読者プレゼント
☆佐伯ポインティさん「サイン色紙」プレゼント!