ババくる!? 第五十八場 ゲスト:榎本 司
ババくる!? ゲスト:榎本 司さん
今回のゲストは、5歳で子役デビューし、モデルやドラマ・映画に大活躍の榎本司さん。9月公開の映画『しびれ』では、言葉が話せない少年という難しい役を演じ、俳優としてひと回り成長しました。芸能活動を始めたきっかけやドラマ・映画の撮影エピソード、俳優やモデルとしての今後の目標などについて伺いました。
━ 芸能界に入るきっかけを教えてもらえますか?
5歳の頃に、父親がアミューズの子役募集に応募して、オーディションに合格したのがきっかけです。実は、タレントや役者になりたいという夢があったわけではなかったので、父親がどうして応募したのかも分かってないんです。小さい頃は自分が何をやっているのかもよく分からなくて。小学3年生くらいからどんどんやる気が出てきて「もっといろんな仕事をやってみたい」と感じるようになりました。
━ 子役時代はどんなことをしていたのですか?
アミューズの育成プログラムで演技やダンスを学びました。やってみたら楽しくて。特にダンスは将来的にも必要だと思ったので、小学3年生からプライベートでも地元のダンススクールにも通うようになり、いまも頑張っています。最初のお仕事が『小学1年生』(小学館)のモデルで、6歳から2年くらい、色々な場所での撮影を経験しました。
その後、『ニコ☆プチ』(新潮社)のメンズモデルも務めました。この時、同年代のモデルの越山敬達くん、荘司亜虎くんと仲良くなって、現場でおしゃべりしたり、TikTokでダンスを披露したり、ワイワイと楽しい現場でした。越山くんとは、お互い卓球が好きなので、撮影が終わった後に近くの卓球場で遊んで帰ることもありました。実は中学の部活が卓球部で、1年生の時は頑張っていましたが、2年になってから幽霊部員になっちゃったんですけど(笑)。
子役から青年役へ。積み上げた経験と撮影秘話
━ 初めて映画に出演したのはいつですか?
7歳の時、映画『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』に、ドクターヘリを体験しにきた子供たちの一人として出演しました。当時はオーディションに受かりたくて、風邪で熱がある日も自主練習を頑張りました。母親にもセリフの練習に付き合ってもらって…合格した時はうれしくて、台本を何度も読み込みました。
その後、大きく役者としての意識が高まったのは池井戸潤原作の映画『アキラとあきら』です。貧乏なアキラと裕福なあきら、二人のあきらの物語で、竹内涼真さんが演じる貧乏なアキラの子供時代の役をやらせていただきました。
━ 役作りやセリフ覚えはどうやっているのですか?
役作りについては、自分と似ている所を見つけて、まずその部分を出していくようにしています。そして台本を読み込んで、感情を想像していく作業をします。『アキラとあきら』では、役の感情は理解できていたのですが、実際に演技してみると難しい所がありました。例えば、監督から滑舌について指摘があったり。父親の工場の機械が差し押さえられるシーンで、怒りや悲しみの表情を出すのが難しかったです。
セリフの覚え方は、台本を何度も読み込むことで、声に出さない黙読と口に出しての練習を交互に繰り返して、さらに頭の中で再生するなど工夫しています。寝る前にも台本を欠かさず読み、自然とセリフが出てくるようになるまで徹底して覚えます。
━ 先輩から演技のアドバイスを貰うことはありますか?
いい演技をするために、俳優の先輩や監督に自分からアドバイスを貰いに行くことはあります。泣き方のコツや演技に迫力を出す方法などを教えていただきました。また、役の気持ちが分からなくなった時には「自分がその役になりきって、自分の中にある感情を思い切り出していきなさい」と助言をいただいたこともあります。
━ 流行語にもなったTBSドラマ「ふてほど」にも出演していましたが、撮影現場はどうでしたか?
『不適切にもほどがある!』では、オーディションを受けてからずいぶん経っても連絡がなかったので、不合格かと諦めかけていたところ、決定の連絡が来てビックリしました。僕が演じたのは、ひきこもりの中学生佐高くん役で、家にこもってゲームしているという部分で自分とも共通点がありました。僕自身はクラスに馴染めないことはありませんが、そこに至る感情は理解できる部分があったので、演じやすい役でした。
キャストやスタッフに面白い方が多くて、スケジュールがギリギリで切羽詰まった状況でも常に笑い声が絶えない、明るい雰囲気の撮影現場でした。キヨシ役の坂元愛登さんが高校受験の時期だったので、高校受験のネタで盛り上がりました。でも、撮影現場は大人の方ばかりで緊張しているので、基本的には隅っこで台本読みながらじっとしていることが多いです(笑)。
映画『しびれ』で、主役の少年時代の役を熱演
━ 最新の出演作は、一人の人生を4人のキャストで繋いでいく役だそうですね。どんな物語ですか?
映画『しびれ』では物語の主人公・大地を、幼少期から青年期にかけて、穐本陽月くん、加藤庵次くん、そして僕、北村匠海さんの4人でバトンを繋ぎ、演じています。大地は、幼少期に永瀬正敏さん演じる暴君のような父親の影響で声を失い、宮沢りえさん演じる水商売で働く母と雑居ビルの屋上でひっそりと暮らしています。めったに帰らない母を待ち続け、貧しく苦しい生活を送る中で、少年・大地は自分の居場所を求めていました。
(編集部注:母への憎しみと愛が混ざり合い、整理のつかない感情に揺れながら生き抜いた孤独な少年の20年間を描く物語。第26回東京フィルメックスのコンペティション部門で審査員特別賞、第76回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に選出)
━ 複雑な事情を抱えた少年の役をどう演じたのですか?
台本をいただいた時は「面白そうだな」「この役を演じられるなんて、すごく嬉しい」と純粋に思いました。同時に「自分にこれほどの表現ができるのだろうか」という不安も大きかったです。僕が演じた大地は、幼少期の体験から声を失っています。人と会話をする時はいつも文字を書いて伝えるのですが、言葉がない分、内側に抱えている感情はものすごく大きい。その静かさの中にある激しい感情を、表情やしぐさだけで表現するのは、本当に難しかったです。とにかく台本を読み込み、自分の中から湧き上がる感情を丁寧に引き出すことに集中しました。
僕の中で大地は、母親への憎しみの裏に「愛してもらいたい」と強い思いを感じました。その思いを理解することで、役に自分が入り込み、役が自分の中に溶け込んでくるような…「自分自身が大地になった」という、確かな手応えを感じることができました。内山監督の演出方法は、演技指導は少なく役者が感じていることを自由に表現して欲しい、という演出だったので自由な反面、とてもプレッシャーにもなりました。結果的に自分が感じた役柄を本音で表現できて、これまでで一番いい演技ができたと思っています。
━ 役をプライベートで引きずることはありませんでしたか?
もちろん演技だと分かってはいるけど、撮影後も心をギュッと締め付けられる感じがありました。役の癖やしぐさもうつるんです。例えば、人と対面するときに首をつまむしぐさをしたり、爪を噛んだりする大地の癖が出たり。撮影が終わった後もたまに出ちゃって「ああ、やっちゃったな」って。撮影中に学校の友達から「ちゃんと寝てる?」って聞かれました。髪を長くしていつもと雰囲気が違うので心配されたんだと思います(笑)。
━ 母親役の宮沢りえさんとの演技はどうでしたか?
僕が演じる少年期の大地が、母親に対して感情を爆発させてぶつかるシーンがあったのですが、その時の宮沢さんの迫力が、桁違いで圧倒されました。「次からは自分も負けないぞ」という強い気持ちになりました。他にも宮沢さんが監督と細かく確認されている様子を間近で見ていると、台本に書かれているト書きをどう読み解くのか、演技において何が重要なのか、本当に勉強になることばかりでした。
━ 完成した映画を観てどう思いましたか?
「ああ、大地は大人になってこうなるんだ」って驚きがありました。実は内山監督の演出方針で、撮影中は自分の未来にあたる青年期の大地の台本はいただいてなかったんです。自分の未来が分かっていると、少年期の演技に影響が出るからって。完成した作品で、初めて北村さんの演技を観たのですが、自分が演じた少年大地の時間が、あんなふうに続いていくんだと思ったら、本当に感動しました。
役者として、もっと多くの経験を積んでいきたい
━ 俳優とモデルでは、どちらが面白いと感じていますか?
いま一番面白いと感じるのは俳優です。普通に生きていたら体験できないことを、役を通じて体験できるところが面白くて。僕が知らない世界をこれからもっと知っていきたいです。もちろんモデル活動にも、俳優とはまた違った面白さがあります。ポーズや表情で自分を表現するのも、企画やコンセプトに合わせて服や場面をセッティングして撮影するのもすごく楽しくて。モデルをやることで、自分に自信がついたのは大きかったです。小中学生向けの雑誌は卒業したので、これからはもう少し上の世代向けの雑誌やファッションショーにも挑戦してみたいと思っています。
━ 芸能界に憧れの人はいますか?
俳優の吉沢亮さんは、演技力が凄いので尊敬していますし、目指したい方です。同じ事務所の先輩なので、事務所で挨拶をさせていただく機会もあります。フジテレビのドラマ『PICU 小児集中治療室』では、吉沢さんが演じる志子田武四郎の幼少期役を僕が演じました。
━ 今後はどんな俳優を目指しますか?やりたい役はありますか?
ひとつの演技だけじゃなくて、多くの役を経験して多彩な演技ができる俳優になりたいです。今やりたいと思っているのがアクションです。以前、『今際の国のアリス』という配信ドラマで、日常的に暴力を振るう父親から殴られるシーンがあり、その時に受け身のアクションを教わりました。殴られて吹き飛ぶアクションは経験しましたが、次はもっと本格的な格闘アクションにも挑戦してみたいです。殺陣か格闘技か、ジャンルは決めていませんが、高校生になったのでこれからじっくり計画を立てるつもりです。他には、まだ舞台の経験がないので、舞台にも挑戦したいと考えています。
━ 最後に読者へのメッセージをお願いします。
9月25日公開の映画『しびれ』は、今までにない映画だと思います。少年の視点で描かれた映像の中に流れる、風景や表情を観て、感じてください。それぞれの方が感じたものを胸に、持ち帰っていただけると嬉しいです。僕自身、まだ未熟ですが、吉沢さんのように多くの人に感動を届けられる俳優を目指して、一生懸命頑張ります。これから成長していく姿を、ぜひ見守っていただけると嬉しいです。
透明感あふれる爽やかな笑顔が印象的な榎本司さん。カメラの前ではふと大人びた表情を見せる瞬間も。仕事にまっすぐ向き合う真摯さと芯の強さ、そして少年から青年期を迎える等身大の輝きをひしひしと感じる取材でした。これからも多くの作品を通じて、様々な顔を見せてくれるでしょう。
Text: 櫻井 実由莉
Photo: 石森 亨
映画『しびれ』2026年9月25日公開
どこにも居場所がない孤独な少年が、大きな愛を知るまでの20年。光を探し続けたその瞳は、最後に何を見つめるのか。4人の俳優が紡ぐ、感動の物語!

©2025「しびれ」製作委員会

©2025「しびれ」製作委員会
第76回ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品
第26回東京フィルメックス審査員特別賞受賞
「しびれ」公式サイト:https://shibire.jp
X:@shibire_movie
Instagram:@shibire_movie
ゲストプロフィール
俳優。
2011年生まれ、千葉県出身。
子役から芸能活動を開始。雑誌『小学一年生』のモデルを経て、『ニコ☆プチ』のメンズモデルを務めた。また、ドラマや映画に子役として出演。主な出演作に、ドラマ『不適切にもほどがある!』『今際の国のアリス シーズン3』、映画『アキラとあきら』など。2026年9月公開予定の映画『しびれ』では主人公の少年期役に抜擢されるなど、話題作への出演が続く若手俳優。
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